血行障害の主な原因である動脈硬化は血管の加齢現象であり、徐々に体をむしばんで行きます。
動脈硬化の進行を抑えるため高血圧症・高脂血症・糖尿病といった生活習慣病の診断を行います。
また当施設ではCTで内臓脂肪を測定できます。
詳しくはこちらをご覧ください。>> 内臓脂肪測定(腹部CT)検査
疾患別に詳しくご紹介します。
- 高血圧症
- 動脈硬化
- 閉塞性動脈硬化症
- 高脂血症
- 家族性高コレステロール血症
高血圧症
日本では3人に1人が高血圧といわれています。
血圧の高い状態が長く続くことによって、脳や心臓、血管などの臓器が痛み、脳卒中、心臓発作、腎不全などの全身性の病気を招きます。
収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上を持続する場合を高血圧と呼んでいます。
- 収縮期血圧:心臓が縮んで血液を送り出し、血管の圧力が高くなった時の血圧(高い方の数値)
- 拡張期血圧:心臓が拡がって血液を心臓に取り込み、血管の圧力が低くなった時の血圧(低い方の数値)
高血圧症はどうやって防ぐの
- 脳卒中や心筋梗塞の予防のためにも、朝晩に少なくとも1回ずつ測りましょう。
- 測定した血圧はすべて記録し、主治医と相談しましょう。
- 上腕で測るタイプの血圧計が、より正確とされています。
- 腕帯が心臓の高さに来るようにして測定します。
血圧の計り方
朝は起きてから1時間以内に排尿を済ませてから、1~2分座って安静にした後に、測ります。(食事やお薬を摂る前です)
夜は就寝前に1~2分座って安静にした後に、測ります。
血圧は病院で測った値と、家庭で測った値が違う場合もあります。
血圧に不安を感じる方は、家庭で測った血圧を記録して、医師とよく相談しましょう。
血圧の目安は?(降圧目標)
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
若年者・中年者 | 130/85mmHg未満 | 125/80mmHg未満 |
高齢者 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
糖尿病患者
慢性腎臓病患者 |
130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
脳血管障害患者 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧とされています。
塩分を抑えましょう
日本人の1日平均食塩摂取量は11g~12gです。(高血圧の患者様は1日6g未満が目標です。)
減塩への近道は徐々に薄味に慣れていき、 日々の生活として習慣づけることが大切です。
様々な食品に含まれる塩分
食事の際は食品に含まれる塩分に気を付け、食べ方を色々と工夫するなどして、塩分の摂り過ぎに注意しましょう。
- 薄味に慣れましょう。
- 漬け物・汁物など塩分の多いものは食べる回数を減らしましょう。
- 献立にはいろいろな味付けをして、効果的塩味を使いましょう。
- しょうゆやソースは「かけて食べる」より「つけて食べる」
- レモン、すだち、かぼすなど酸味を上手に使いましょう。
- とうがらし、故障、カレー粉など、香辛料を上手に使いましょう。
- ゆず、しそ、みょうが、ハーブなど香りを利用しましょう。
- 炒ったゴマやくるみなどの香ばしさも味方です。
- 揚げ物、油いためなどの油の味を利用してみましょう。
- 酒の肴は塩分が多く含まれていますので注意しましょう。
- ハム、ベーコン、はんぺんなどの練り製品・加工食品には気を付けましょう。
- どんな食べ物でも、食べすぎには注意しましょう。
肥満に注意しましょう
肥満は、高血圧と深い関わりがあります。肥満の判定は、BMI(ボディー・マス・インデックス)という基準を用いることが多いですが、肥満が大きな危険因子であることは、多くの研究や調査で明らかになっています。とくに、皮下よりも内臓に脂肪がつく内臓肥満(上半身型肥満・リンゴ型肥満)が、血圧の上昇と関連が深く、こうした肥満者が体重を減らすと、 実際に血圧が下がるという報告があります。 その上、肥満は血圧を上げるだけでなく、肥満自体が心血管病の危険因子の一つなので、肥満していて高血圧の人は、体重を標準体重近くにすると、血圧や高脂血症、高尿酸値、血糖値なども適正値に近づく可能性が高くなります。肥満というほどではなくても、毎年少しずつ肥満に近づいている人は、今のうちに標準体重を守る生活習慣を身につけましょう。
肥満ぎみになっていませんか?
※【BMI 】18.5未満:低体重 / 18.5以上25未満:普通体重 / 25以上:肥満
当クリニックではCTで内臓脂肪を測定可能です。詳しくはこちらをご覧ください。>> 内臓脂肪測定(腹部CT)検査
適度な運動をしましょう
普段からからだをよく動かす習慣のある人には、肥満の人が少なく、コレステロールや中性脂肪などの血清脂質も適正で、心血管病の危険因子が少ないことが多いです。また、運動によってインスリンのはたらきが改善されるため、糖尿病になりにくくなる効果もあります。
普通、運動をしている最中には血圧は上がります。ぽかぽかと暖かくなって、頬が熱くなってくるのは、血液循環が良くなり、血流量も増しているためで、この時には血圧が上がってきます。
ところが、一般的には運動習慣のない人の血圧のほうが、運動習慣のある人にくらべて高くなっています。そして、酸素をたくさん使う運動(有酸素運動)は、長期間くり返して続けると、血圧を下げる作用があることがわかっています。
勧められる有酸素運動
ウォーキングや軽いジョギング、ゆっくりと長い距離を泳ぐ、平らなところでのサイクリングなどを継続して行うと、長期には、高血圧の人は収縮期も拡張期も血圧が下がってきます。
ストレスや急な温度差に注意しましょう
「そんなに怒ると血圧が上がるよ」などとよく言われるように、情動的ストレスが、少なくとも一時的に血圧を上げることがあります。
よって、高血圧の予防には、かかったストレスはなるべく早く解消し、心身ともにリラックス状態にもっていったほうが良いです。
入浴、アロマテラピー、マッサージ、好きな音楽を聴く、好きな花を買ってくる……など、自分なりのリラックス法を見つけて実行しましょう。
また、寒さが血圧を上げることは、多くの研究や調査で明らかにされています。 季節による血圧変動を見ると冬に高くなり、心血管病による死亡率も冬が一番高いです。
そのため、高血圧の人は、冬の寒さを避ける努力をしましょう。廊下やトイレ、浴室等も十分に暖かにし、部屋ごとの温度差を少なくしましょう。
お風呂は、熱い湯を避けて長湯をせず、室温は20℃位にして、38~42℃くらいの湯に5~10分間入るにとどめた方がいいでしょう。 高血圧の人は、冷水浴やサウナは入らないようにしましょう。
高血圧症についてはPDFでもご覧いただけます。
PDFを開くには、Adobe Readerインストール(無料)が必要です。
お持ちでない方はこちらからダウンロードをお願いします。 >> ダウンロード
動脈硬化
動脈硬化とは、血管にコレステロールなどがたまり、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)が起こる状態をいいます。動脈がひどく傷んでくるのは40代からといわれます。動脈硬化は、喫煙や生活習慣病である糖尿病や高血圧、高脂血症により、いつも血管に負担がかかる状態であると、さらに起こりやすくなります。
動脈硬化が起こると、その血管の先の臓器に障害が起こります。例えば、心臓に栄養や酸素を送る血管である冠動脈に動脈硬化が起これば「狭心症」や「心筋梗塞」、脳に栄養や酸素を送る血管である頸動脈や脳動脈に動脈硬化が起これば「脳梗塞」、足先に栄養や酸素を送る血管に動脈硬化が起これば「閉塞性動脈硬化症」といった病気の原因となります。
動脈硬化が進むのを防ぐ生活習慣の改善は、血中脂質を下げるだけでなく、動脈硬化を促進するほかの要素、喫煙、高血圧、耐糖能異常、肥満なども改善できるよう生活を改善します。
具体的には、1.禁煙 2.食生活のコントロール 3.適正体重の維持 4.運動量の増加です。
脂質異常の診断基準(空腹時採血)
高LDLコレステロール血症(悪玉) | LDLコレステロール ≧ 140 mg/dl |
---|---|
高HDLコレステロール血症(善玉) | HDLコレステロール < 40 mg/dl |
高トリグリセライド血症 (中性脂肪) | トリグリセライド ≧ 150 mg/dl |
この診断基準は、薬物療法の開始基準を表記しているものではありません。
薬物療法の適用に関しては、他の危険因子も勘案して決定されるため、この値であるからといって、すぐに薬を飲み始めなければならないという事ではありません。
色々な危険因子(動脈硬化を引き起こす要因)もよく考え、照らし合わせて治療方針を決定します。
リスク別脂質管理目標値
治療方針の原則 | カテゴリー | 脂質管理目標値 (mg/dl) |
|||
---|---|---|---|---|---|
LDL-C以外の 主要危険因子※ |
LDL-C | HDL-C | TG | ||
1次予防 まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する。 |
1(低リスク群) | 0 | <160 | ≧40 | <150 |
2(中リスク群) | 1〜2 | <140 | |||
3(高リスク群) | 3以上 | <120 | |||
2次予防 生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する。 |
冠動脈疾患の既往 | <100 |
脂質管理と同時に、他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)を是正する必要があります。
■加齢(男性(男性(男性45歳以上、女性歳以上、女性55歳以上)■高血圧■糖尿病(耐糖能異常を含む)■喫煙
■冠動脈疾患の家族歴■低HDLHDL-C血症(<40 mg/dl)
●糖尿病、脳梗塞閉性動脈硬化症の合併は、3(高リスク群)とする。
検査結果の数値だけを見て、安心したり、不安になったりせずに、色々な要因を総合的に診て、判断する事が必要ですので医師と相談しましょう。
血管の元気度チェック
あなたの血管は元気ですか?
動脈硬化を悪化させる危険因子として、次の項目があげられます。最近の健康診断などの検査値を見ながら、あなたの血管がどのくらい元気かチェックしてみましょう。
- □ LDLコレステロール値が140mg/dl以上
- □ HDLコレステロール値が40mg/dl未満
- □ 中性脂肪(トリグリセライド)値が150mg/dl以上
- □ 高血圧と判定されている
- □ あなたの年齢は45歳以上(男性)、55歳以上(女性)である
- □ あなたのウエストは85cm以上(男性)、90cm以上(女性)である
- □ 糖尿病と言われたことがある
- □ ご家族や親戚に心臓病や脳卒中で亡くなった人がいる
- □ 脂質代謝異常(高脂血症)の薬で治療中である
- □ タバコを吸う
いくつ当てはまりましたか?
当てはまる数が多いほど動脈硬化を悪化する危険度が高いといえます。
禁煙や、生活習慣の改善を心がけ、
医師の診断を受けましょう。
動脈硬化についてはPDFでもご覧いただけます。
PDFを開くには、Adobe Readerインストール(無料)が必要です。
お持ちでない方はこちらからダウンロードをお願いします。 >> ダウンロード
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化により、手や足の血管の狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気です。
手足にさまざまな障害が現れますが、初期症状は『冷感』や『しびれ感』であるため見逃したり、軽く考えて放置してしまいがちです。
主な症状
閉塞性動脈硬化症になっている方は心臓病(40~56%)や脳血管障害(19~33%)を高い頻度で合併するため生存年数が短くなるといわれています。
閉塞性動脈硬化症になりやすいのは、特に50~60歳以上の男性や血糖値の高い患者様です。
※数値はJ Vasc Surg 31(1part2)S1~S278,2000より
冷感・しびれ感
手足が冷たい / 手足がしびれる / 手足の指が青白い
潰瘍・壊死(かいよう・えし)
手足に治りにくい潰瘍ができる / 壊死部は黒くなる
間歇性跛行(かんけつせいはこう)
一定距離を歩くと、主にふくらはぎなどが締め付けられるように痛くなり、休まなければならない。(数分で回復)
階段をのぼるのは特につらい
安静時疼痛(あんせいじとうつう)
じっとしていても手足が痛み、夜もよく眠れない
刺すような痛みが常に持続している
閉塞性動脈硬化症の診断
触診
実際に膝窩動脈 (ひざの後ろ側)・足背動脈 (足の甲)・後脛骨動脈 (くるぶしの下側)・大腿動脈 (ふとももの付け根)など、足に触れて脈拍を調べることで、動脈硬化の有無を調べます。
足関節血圧および上腕の比(ABI)
足と腕の血圧の比をABI といいます。
ABI を測定することで、足の血液の流れを調べます。
正常では、ABI は1以上ですが、血液の流れが悪くなると、ABIは低下します。
ABIが0.9以下の場合には、足に動脈硬化が起こっていると考えられます。
閉塞性動脈硬化症の治療
閉塞性動脈硬化症の治療は日常生活の改善と、軽度のうちは運動療法や薬物療法が中心となります。しかし、重症化すると手術が必要になる場合もあります。
日常生活を見直す
禁煙しましょう
タバコに含まれているニコチンと喫煙による一酸化炭素は、 動脈硬化を引き起こしたり、動脈硬化を悪化させたりします。 禁煙を必ず実行しましよう。
適度な運動とバランスのよい食事をとりましょう。
動脈硬化を促進する、高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満の対策として、食生活の改善、適度な運動を心掛けましょう。
食生活の改善・・・具体的には?
- 栄養バランスを考え、コレステロールや脂肪分の多い食べ物は控え、食べ過ぎに 注意しましょう。
- 塩分はとり過ぎないようにする。
- 節酒
- 糖尿病、高血圧など病院で医師または管理栄養士から食事指導を受けている方は、その指導に従ってください。
ストレスをなくしましょう
不規則な生活を改善して、ストレスをためない生活をしましょう。
運動療法
閉塞性動脈硬化症の運動療法とは、主に「歩く」ことです。太い血管が狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こすと血液の流れが悪くなり、歩行時に筋肉(ふくらはぎが多い)が痛くなるので歩行に支障を来します。しかし、無理のない距離を「歩く」ことで周囲の細い血管(側副血行路というバイパスとなる血管)が発達し、血液の流れが改善するので、長い距離を歩くことができるようになります。
運動療法には、医療機関で行う監視下運動療法と、医師の指導のもとに自宅で行う在宅運動療法があります。監視下運動療法を行った患者さんの場合、1ヵ月で歩行距離は約2倍、3ヵ月では約3倍に増加することがあります。その後も在宅運動療法を続けることにより、治療効果を維持し、場合によってはさらに増加させることも期待できます。
運動のポイント
- 医師より運動の許可をもらいましょう。
- 現在歩行可能な距離を測り、その距離を通常のスピードの半分で歩行しましょう。
- 痛みが出たら必ず痛みが消失するまで、休息をとりましょう。
- 1日30分から1時間程度で1km目標に毎日行うのが理想的です。
- 最低でも1日30分、週3回は行うように心掛け、3カ月以上は続けましょう。
- 寒い日は屋外で行わず、屋内で行いましょう。
毎日歩行運動を続けていくと、側副血行路が発達して、血液の流れが改善されますので、なるべく毎日続けるようにしましょう。
薬物療法
閉塞性動脈硬化症に使われるお薬は、血液をサラサラにしたり、血管を拡げたりすることによって血液の流れを改善する作用があります。最も多く使用されているお薬は抗血小板薬ですが、症状に合わせてお薬を使い分けたり、2種類以上を併用したりします。お薬には内服薬や注射薬があります。
閉塞性動脈硬化症の薬物療法は、下肢の症状改善だけではなく、脳梗塞や心筋梗塞といった命にかかわる病気の発症を予防することも目的に行われます。
抗血小板薬
血小板は出血した際に止血する役割を果たしますが、活発に働きすぎる場合、血栓(血の塊)ができたり、動脈硬化が進行したりします。これを抑えるのがこのお薬です。
末梢血管拡張薬
手や足などの血管を拡げ、末梢の血液の流れを改善します。
抗凝固薬
血栓ができたり、血栓が大きくなるのを防ぎます。
血管内療法
血管内治療は、動脈硬化によって狭くなった血管を拡げ、血液の流れを改善させる治療です。薬物療法とは異なり、血管の中で直接行われる治療で、次のような種類があります。
バルーン法
風船の付いた細い管(バルーンカテーテル)を血管の中に入れて、風船を膨らませることで血管を拡げ、血液の流れを改善・維持させます。
ステントの挿入
ステントと呼ばれる器具を血管の中に入れて、血管を内側から支えることで血管が狭くなるのを防ぎ、血液の流れを改善・維持させます。
外科的療法:バイパス手術
人工血管や自分の静脈を使って、新しい血液の道(バイパス)を作り、血液の流れを保つ手術を行います。
その他の注意点・足のケアをしましょう!
足の血液の流れが悪くなると、皮膚へ届く栄養が不十分になり、足の皮膚が弱くなります。足に傷がつきやすく、また傷が治りにくくなるので、足の状態のチェックとケアが大切です。
毎日足をよく観察し、傷などがないかチェックしましょう
傷、腫れ、変色、変形、うおのめ、たこ、ひび割れなどがないかチェックしましょう。毎日の足の観察のほか、深爪にならないように爪のケアにも注意しましよう。
足を清潔に保ちましょう
スポンジや柔らかい素材のタオルで、足の裏や足指の間もきちんと洗いましょう。
はだしではなく、靴下をはきましょう
はだしでは、けがや靴ずれを起こしやすいので、靴下をはきましょう。
足に合った靴をはきましょう
靴がきゅうくつだと…指の間や靴に当たっている所は、擦れて潰瘍、うおのめ、たこが形成されやすくなります。
足の指に余裕がある、つま先に10mmの余裕のある靴をはきましょう。
やけどをしないように、お風呂や暖房器具の温度に注意しましよう
手足を冷やさないように保温に気をつけることは大切です。しかし、お風呂は、やけどの原因になることが多いので、温度を確認してから入りましょう。
また、こたつや電気カーペットなどもやけどの原因になります。温度に注意するか、部屋全体を暖める暖房器具を使いましょう。
長時間の起立や正座は避けましょう
長時間の起立や正座、しゃがみ込んだ姿勢は血管に負担がかかり、病状や症状が悪化しますので避けましょう。
閉塞性動脈硬化症についてはPDFでもご覧いただけます。
PDFを開くには、Adobe Readerインストール(無料)が必要です。
お持ちでない方はこちらからダウンロードをお願いします。 >> ダウンロード
高脂血症
高脂血症とは、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪(代表的なものはトリグリセリド)が、多過ぎる病気のことです。
血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質がとけこんでいます。ところが、血液中の脂肪が異常に増えても、普通自覚症状はないため、放置してしまう方が多くいらっしゃいます。放置してしまうと増えた脂質が血管の内側にたまっていき、動脈硬化になってしまいます。しかし、動脈硬化になっても、まだ自覚症状がありません。ついには、心筋梗塞や脳梗塞の発作を起こしてしまい、やっと高脂血症の治療の重大さに気づくことが多いのです。
血液中にある4種類の脂質のうち、多過ぎると問題なのは、コレステロールと中性脂肪です。高脂血症は3つの種類があります。
コレステロールのみが多いタイプ:高コレステロール血症
中性脂肪のみが多いタイプ:高中性脂肪血症
両方とも多いタイプ:高コレステロール高中性脂肪血症
血液中の総コレステロール、とくにLDL(悪玉)コレステロールが多過ぎると、動脈の壁につき動脈が厚く硬くなります。よって、高コレステロールが動脈硬化にとって大問題であることは明らかです。
中性脂肪は、それ自体は動脈硬化の原因にはなりません。しかし、中性脂肪が多くなると、HDL(善玉)コレステロールが減り、LDLコレステロールが増えやすくなります。よって、間接的に動脈硬化の原因となります。
「脂質異常症(高脂血症)が疑われる人」は約1,410万人もいます。ただし、この数字はHDLコレステロール値と服薬状況のみを用いたもので、動脈硬化疾患予防ガイドライン(2007年版)の基準である、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールを用いた判定での、「脂質異常症(高脂血症)が疑われる人」は約4,220万人でした。(厚生労働省発表平成18年 国民健康・栄養調査の概要による)
さらに、国民健康・栄養調査から見ると、男性は30代から、女性は50代からほぼ2人に1人が高脂血症の状態にあると考えられます。
しかも、自分が高脂血症であることを自覚していない方が多く、自覚している人はわずか30%(平成11年国民栄養調査)にすぎません。
また、高血圧や糖尿病に比べると、高脂血症は軽視される傾向があり、下の表でもわかるように、その怖さが認識されていません。「わからない」という回答も一番多く、高血圧や糖尿病に比べると病気の本質が知られていないことが問題です。
高脂血症の予防法:食事のコントロール
高脂血症は、遺伝子異常や他の病気に伴って現れるものもありますが、8割以上は多くの生活習慣に関連した原因が重なって発症してきます。
ではその原因は、遺伝的な素因のほかに、過食、高脂肪食、運動不足などの悪い生活習慣や、それによる肥満があげられます。つまり、食事にからんだ要因がいちばん多いのです。よって、高脂血症を防ぐにはまず、食事に気を配って食生活を適正に保つことが重要なのです。高脂血症を防ぐための食生活では、次の6項目が重要です。
高
- 偏らず「栄養バランスのよい食事」を。
- 摂取総エネルギー量を抑えて、適正な体重を保つ。
- 飽和脂肪酸(おもに獣肉類の脂肪)1に対して丌飽和脂肪酸(おもに植物性脂肪や魚の脂)を1.5~2の割合でとる。
- ビタミンやミネラル、食物繊維もしっかりとる。
- 高コレステロールの人は、コレステロールを多く含む食品を控える。
- 中性脂肪が高い人は、砂糖や果物などの糖質と、お酒を減らす。
高脂血症における食事療法:第一段階
総摂取エネルギー、栄養素配分およびコレステロール摂取量の適正化を行います。
総摂取エネルギーの適正化
適正エネルギー摂取量=標準体重*×25~30(kcal)
*標準体重=[身長(m)]× [身長(m)]×22
栄養素配分の適正化
- 炭水化物:60%
- たんぱく質:15~20%(獣鳥肉より魚肉・大豆たんぱくを多くする)
- 脂肪:20~25%(獣鳥性脂肪を少なくし、植物性・魚類性脂肪を多くする)
- コレステロール:1日300mg以下
- 食物繊維:25g以上
- アルコール:25g以下(他の合併症を考慮する)
- その他:ビタミン(C、E、B6、B12、葉酸など)やポリフェノールの含量が多い野菜・果物などの食品を多くとる(ただし、果物は単糖類の含量も多いので1日80~100kcal以内が望ましい)。
第1段階で血清脂質が目標値とならない場合は第2段階へ進みます。
高脂血症における食事療法:第二段階
病型別食事療法と適正な脂肪酸摂取を行います。
1.高LDL-C血症(高コレステロール血症)が持続する場合
脂質制限の強化:脂肪由来エネルギーを総摂取エネルギーの20%以下
コレステロール摂取量の制限:1日200mg以下
飽和脂肪酸/一価丌飽和脂肪酸/多価丌飽和脂肪酸の摂取比率:3/4/3程度
2.高トリグリセリド血症が持続する場合
- アルコール:禁酒
- 炭水化物の制限:炭水化物由来エネルギーを総摂取エネルギーの50%以下
- 単糖類※:可能なかぎり制限、できれば1日80~100kcal以内の果物を除き調味料のみでの使用とする。
※単糖類:最も簡単な基本構成単位でできている糖類。果糖、ブドウ糖、ガラクトースなど。
高コレステロール血症と高トリグリセリド血症がともに持続する場合
1と2で示した食事療法を併用する。
高カイロミクロン血症の場合
脂肪の制限:15%以下
(日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版」より)
高脂血症の食事ポイント
高脂血症の食事のポイントはエネルギーの量の制限とP/S比※を上げることです。
さらに、下記の表に3つのタイプそれぞれに適した食事のポイントをかかげます。
※P/S比:血中コレステロールを低下させる作用がある多価不飽和脂肪酸(P)と増加させる作用がある飽和脂肪酸(S)の接種比率
食事のポイント | コレステロールのみ高い | 中性脂肪のみ高い | 両方とも高い |
---|---|---|---|
コレステロールを多く含む食品の制限 | ★ | ★ | |
食物繊維の摂取をふやす | ★ | ★ | |
甘い食品(糖分)の制限 | ★ | ★ | |
アルコール類の制限(医師と相談) | ★ | ★ |
適正体重を維持しましょう
BMI22がもっとも病気になる確率が低く、理想的です。BMI25以上だと肥満で、他の合併する病気がないか、検査を行います。
BMIが正常でも、内臓脂肪が蓄積されている(いわゆる隠れ肥満)は要注意です。 ウエストが男性で85cm以上、女性で90cm以上あると、内臓に脂肪がたまっている疑いがあります。できればCTスキャンで内臓脂肪面積を測ってみることが望まれます。
体重を適正範囲に戻し、内臓蓄積を減らすと、たくさんの危険因子をもった「メタボリック症候群」の人にたいへん効果的であることが立証されています。
高脂血症の予防法:運動をしましょう
高脂血症の予防のために、食事とならんで重要なのが運動です。運動が重要である理由は次の3点です。
とり過ぎたエネルギーを消費し、脂肪分が皮下や内臓に蓄積されるのを防ぐ。
血行を促して血管の弾力をよくしたり血管をひろげるなどして、血圧を下げ、動脈硬化を防ぐ。
体内での脂肪の流れがよくなるように調節する酵素の一つであるリパーゼを活性化させ、LDL(悪玉)コレステロールを減らしてHDL(善玉)コレステロールを増やす。
有酸素運動をしましょう
運動は、エネルギーを上手に消費するためと、全身の血行をよくするために行うので、激しいスポーツのような、ハードな運動をする必要はありません。酸素をたくさん消費しながら行う、いわゆる有酸素運動が効果的です。
楽しく、自分に合った、長く続けられる運動を選ぶことが重要です。
家事もしっかり行えば立派な運動になります。おすすめなのは、ウォーキングです。若くて体力に自信がある方ならジョギングもいいのですが、中高年以上で、最近あまり運動経験のない方は、ウォーキングから始めるのが無難でしょう。
ウォーキングはちょっとした時間でも、どこででもできるため、毎日続けられます。
健康のための運動はこのように、「気軽にできて続けられる」ことが大切です。
毎日が無理でしたら、はじめは1日おきでも、1週間に2日か3日でもかまいません。運動時間が短くてはダメなどと考えずに、からだを動かすことを楽しんで、だんだん運動を習慣にしていきましょう。また、膝や腰に病気のある方には、脚に負担の少ない、水中でのウォーキングがよいでしょう。
運動を行うときの3大注意点
健康のための運動ですから、無理をして体調をくずしたら逆効果です。とくに次の3つに注意し、体調に合わせて行いましょう。
体調や天気などの状況を総合的に考え、条件が悪いときには休みましょう。
軽い柔軟体操やストレッチによるウォーミングアップとクーリングダウンを忘れずに行いましょう。
水分補給はこまめに、十分に摂りましょう お茶やスポーツドリンク入りボトルなどを携帯しましょう。
高脂血症の予防法:禁煙しましょう
たばこに含まれるニコチンは、交感神経を刺激させる作用があります。
すると、心臓は血圧を上げ、心拍数を高めるなど活動を活発にして、心臓に負担をかけます。また、中性脂肪の原料となる血液中の遊離脂肪酸を増やす作用もあります。
さらに、たばこを吸うと血液中のコレステロールが酸化されて粥状動脈硬化が進行することや、善玉のコレステロールであるHDLコレステロールの濃度が低くなることも知られています。
これらはいずれも動脈硬化を促進します。動脈硬化は心臓病や脳卒中の原因となりますので、1日も早く禁煙することをお勧めします。
高脂血症の予防法:健康診断を受けましょう
高脂血症は、家族性高コレステロール血症以外、初期には自覚症状がまったくありません。しかし、ほかの生活習慣病もそうであるように、早く見つけて早く対処することがとても重要です。症状のない病気を早期に発見するにはどうするか――――それには無症状のうちから定期的な健康診断で調べてもらうこと。それしか方法はありません。
1年に1回はかならず健康診断を受ける習慣をつけましょう。高脂血症の検査は、普通に行われる健康診断では必ず行いますし、ただ血液を採るだけですので、簡単です。とくに、次ページの高脂血症になりやすい人のチェックリストで該当する項目が多かった方は、忘れずに健診を受けましょう。
検査項目とその診断基準は、以下のとおりです。
高脂血症チェック
あなたは高脂血症になりやすい?
高脂血症になりやすい人の条件をあげてみます。それぞれ自分はどうか、チェックしてみましょう。心当たりがある項目が多いほど、危険が高いのです。
- □ 家族に高脂血症や動脈硬化の人がいる。
- □ 高血圧または境界型血圧である。
- □ お酒をよく飲む。
- □ 痛風がある。
- □ 女性で、閉経している。
- □ 肥満傾向である。
- □ 日常的にあまり歩かない。
- □ 糖尿病である。あるいは血糖値が高めだといわれた。
- □ 肉や脂っこい食べ物が好き。
- □ 甘いものや乳脂肪製品(生クリームや洋菓子)、果物が好き。
薬を飲み始める条件
どうしても生活習慣が改善できない方や、生活習慣を改善しても血中脂質の数値が高いまま下がらない場合には、動脈硬化、さらに心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症へと進む危険性がどんどん高くなるため、薬物療法も行うことになります。また、家族性高コレステロール血症の場合には、薬物療法からはじめます。
一般の高脂血症の場合は、食事療法を3~6カ月ぐらい続けてもコレステロール値や中性脂肪値が下がらない場合に、薬物療法に入ります。薬物療法を始めるかどうかの判断は、症状や今までの治療の実践程度によって、医師が行います。薬はイヤだと思っても、医師の指示に従いしっかりと内服しましょう。
また、薬を飲み始めるとそれに頼ってしまう人がいますが、それではいけません。生活習慣の改善や食事療法、運動療法等を行うことの効果は、コレステロールの合成や処理のシステムを調節し、正しい状態に戻そうというものです。よって、それらは薬を始めても、基本として続ける必要があります。
薬を飲んでいるからと安心せずに、根気よく自己管理を続けて、長い時間をかけてじっくりつき合う覚悟が大事です。
高脂血症についてはPDFでもご覧いただけます。
PDFを開くには、Adobe Readerインストール(無料)が必要です。
お持ちでない方はこちらからダウンロードをお願いします。 >> ダウンロード
「家族性高コレステロール血症」とは?
家族性高脂血症は、遺伝的に血液中のコレステロールを取り除くしくみがうまく働かなくなる病気です。これは遺伝する病気で、両親の片方からだけでもこの病気の遺伝子を受けつぐと、子どももこの病気にかかります。遺伝子を片方の親からだけ受けついだ場合をヘテロ型、両方から受けついだ場合をホモ型といいます。ヘテロ型の家族性高脂血症は500人に1人、ホモ型は100万人に1人くらいの割合です。
この病気の特徴は、血清コレステロール値が260mg/以上(原則)と高くなり、アキレス腱が太くなったり、皮膚やまぶたに黄色腫と呼ばれるコレステロールのかたまりができたりします。これらの症状はヘテロ型よりホモ型の方がはっきりと現れます。コレステロール値はヘテロ型でもかなり高くなりますが、ホモ型では極端に高くなることが多く、なかには2,000mg/ を超えるような例もあります。
治療は原則として食事療法です。運動療法や薬物療法も併用します。